技術に落とし込む



自動織機によって始まった産業革命から、200年も経っているのに、いまだ、手織りの方が良い織物ができるのです。この種の議論になると、職人の方が上です。
「モノ作り」を語るとき、往々にして、人間はいかにすばらしい才能を持っているかを証明する議論となり、モノ作り産業をどうするかと言う、本来の議題から外れてしまいます。職人はどこまで進化できるしょうか?

3次元の加工金型に対しても、人が手で作れる「微細さ」と「質感」を越えた要求がされ始めています。微細さや質感の要求をどんどん上げていくと、職人の手による製作時間は、反比例して長くなります。ICのようなミクロン単位の加工をしなければならないとしたら、人間の手では加工できません。

確かに、今でも日本のモノ作りは職人に支えられています。しかし、日本のモノ作り産業の最大の問題点はこの職人の能力に頼っていることです。

今、日本のモノ作りを議論するとき、「職人の育成」を議論するのではなく、職人という技能からの脱皮を議論すべきなのです。
人の技による技能を、再現性のある知識として「技術に落とし込む」 ことが急務です。

なぜ、技能の習得に何年もかかると言われているのでしょうか?「技能は盗め」と言われるように、技能を伝承してこなかったのがその原因です。 全ての職業において、今でも技能は盗めでしょう。

しかし、今、必要とされているのは、技能をマニュアル化し、伝承し、技術に落とし込むことではないでしょうか。

<技能とは>
物事を行う腕前、わざ。個人の知識、経験、運動能力などを融合し、意図をもって製造を行い、目的の仕事を達成する能力。

<技術とは>
物事を取り扱ったり、方法や手段、手順。また、科学理論を実際に応用し、人間生活に役立てる手段。人間にとって有用な生産物をつくりだすことを目標とする行為において、動員される道具立て、及びそれらの使用方法につ「ての知識の体系。

どれだけ職人の手がすばらしいものを作り出しても、産業として考えた場合、自動織機の方が上なのです。自動織機と手織りを比べると、そこには圧倒的なスピードの差があります。
金型においても、職人の経験や運動能力によって作られる金型と、知識体系に落とし込まれた道具立てやシステムによる自動金型製作機では、圧倒的にスピードの差、生産性の差が生まれるはずです。

現在、日本を支えている製造業の基盤である金型産業は、依然強い技術力を有しています。
しかし、大きな問題が2つあります。
一つは、1兆8,000億円の金型産業を、従業員平均年齢54歳、95%が20人以下という産業構造が支えているという点。
もう一つは、3次元CAD、PDM、インターネットを利用した大企業による開発プロセスへの革命が起きている点です。
この2つの問題は、相まって、今は、世界一の金型技術やインフラを持っているとしても、後5年もしたら、高齢化とIT化の遅れにより急激に衰退する可能性があります。金型が衰退すれば日本のものづくり能力は壊滅的な打撃を受けます。

平均年齢54歳。
あと6年で職人は60歳になります。
このままでは、いずれにしても、日本では金型を作れなくなります。
時間がありません。

   
Copyright 1999-2011 by TAKADA KANAGATA INDUSTRY CO.,LTD. All rights reserved.